高校卒業後
4月
娘はもともと芸術工学に興味があり、
関連学科のある大学への進学を目指し、努力していた。
不登校で勉強を中断したが、
4月から、「来年進学する!」と
これまで通っていた個人指導塾で勉強を再開した。
5月
「大学にいかなくていい?」と聞いてきた。
もちろん「いいよ」と答えた。
とりあえず何かしようと思ったようで、
ファーストフード店でアルバイトを始めた。
「半年ほど、まともに人と話をしていなかったから、
面接の時、声の出し方がわからなかったよ。声出そうと思うだけで震えた。」
と言っていた。
6月、7月
アルバイトは、早出・遅出と不規則だったが
休まず出勤していた。
「私ね、しょっちゅうコップ割ったり、
どこかにぶつかたりして怒られてる。
私、仕事できないんだぁ......😭」
不登校以来、ほとんど口を聞いてくれない娘が、
ある日、肩を落としてそう言った。
小さい頃から、物覚えが早く利発な子だった。
保育園のお遊戯会や運動会の前には
「すぐ覚えてくれるから、〇〇(娘)ちゃんを見て踊りなさいってみんなに言ってるんですよ〜😊💕助かります〜😊💕」
と毎年先生方に褒められていた。
小中学校でもお友達も多く、
いつも周囲を笑わせていた。
中学では部活(スポーツ)のキャプテンとして活躍していた。
親バカで恐縮だが成績も良く、
中高の塾の先生は熱心に医学部受験を勧めてくださった。
何につけても私よりうんとデキの良い娘に、
私は大いに期待した。
その娘が「私は仕事ができない」と言っている。
え?
なんで?
そんなことある?
あの何でもできてたこの子が?
私の目の前に立つ娘は、
私の知っている娘とは全く別人に見えた。
娘はすっかり変わってしまった。
毎日震えるほど不安でいっぱいだったが、
”ご飯作って食べさせて環境を整えて見守る”
私にできることはこれだけだった。
8月
娘「お母さん。私は病気だと思う。
精神科に連れていって欲しい。」
私「え?どうしてそう思う?どんな症状がある?」
娘「それはドクターに話す。今は話したくない。」
数日後、
無言無表情の、
かなり痩せてしまった娘を連れて
精神科の門を叩いた。